今年で漫画家活動25周年を迎える人気漫画家・志村貴子先生に、DMMブックスがインタビュー!
志村先生の作品といえば、心の機微を丁寧に描いた群像劇や、少年少女のみずみずしさが描かれているところも魅力のひとつ。思春期に思い悩む現代の少年少女たちを描いた『放浪息子』や『青い花』はTVアニメ化され、『青い花』は第13回文化庁メディア芸術祭・アニメーション部門審査委員会推薦作品になっています。 連載中の『おとなになっても』ではビターな大人百合をテーマとして、高い描写力でLGBTにまつわる悩みや、現実的な大人の葛藤を描き続けています。同じく連載中の『淡島百景』は、第19回文化庁メディア芸術祭 「マンガ部門」優秀賞に輝くなど、幅広く作品が評価されています。近年では、繊細な恋模様を描いたオムニバス漫画『どうにかなる日々』が2020年に劇場公開されるなど、根強いファンも多いです。
今回は、25周年を迎えて10月に個展開催を控える志村先生に、漫画家としての人生を振り返っていただきつつ、個展の裏話から影響を受けた漫画まで幅広くお答えいただきました!
目次
プロフィール
1973年、神奈川県生まれ。1997年、『ぼくは、おんなのこ』でデビュー。代表作『青い花』『放浪息子』はテレビアニメ化された。2015年、『淡島百景』が第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。2020年、『どうにかなる日々』のアニメが劇場公開。その他、『こいいじ』『娘の家出』『敷居の住人』『どうにかなる日々』など、著書多数。また、アニメ『アルドノア・ゼロ』『バッテリー』のキャラクターデザイン、小説の装画など、漫画以外にも活躍の場を広げている。 現在連載中の作品は『おとなになっても』『淡島百景』。

恋とも友情とも、憧れとも執着とも、嫉妬とも恐れとも、言葉にできない、大切なきもち。舞台に立つことを夢みて歌劇学校に通う少女たちの心を、鮮やかに切り取った青春群像シリーズ。淡島(あわじま)歌劇学校合宿所――通称‘寄宿舎’には、舞台に立つことを夢みる少女たちが全国から集まってくる。ミュージカルスターに憧れて入学した若菜。親友の思いを背負って学び続ける寮長の絹枝。周囲の視線を集める美しき特待生の絵美。かけがえのない季節をともに生きる少女たちの青春グラフィティ。【目次】第1話 田畑若菜と竹原王子第2話 竹原絹枝と上田良子第3話 岡部絵美と小野田幸恵第4話 伊吹桂子と田畑若菜第5話 柏木拓人と吉村さやか【番外編】拓人くんの日常志村貴子まつり リレーマンガ 4
25年間を振り返って
ーーまず、この度は個展の開催おめでとうございます。25周年という節目を記念しての個展開催かと思いますが、これまでの執筆活動やご経歴を振り返ってのご感想をお願いします。
もう25年も経ったのだなあという思いと、まだ25年か~という思いがないまぜになっています。アダルト雑誌時代をカウントしていないのは、ちゃんと描ききれないまま投げ出してしまった負い目と反省からです。
ーーありがとうございます。ご活動を振り返った中でも、「この制作時期はつらかった」「この作品は筆が進んだ」など、特に思い入れが深い作品や制作時期はありましたか?
筆がするする進んだ、という時期は思い出せませんが『放浪息子』『ラヴ・バズ』『どうにかなる日々』などの連載やイレギュラーで入る読み切り仕事が重なっていた時期はとにかくしんどかったです。毎日が泣き言という感じでした。
『放浪息子』と『青い花』は連載が終わる時期も近かったので、とにかく目まぐるしい日々でした。そういう意味でも思い入れの深い2作品かもしれないです。
ーー現在も『おとなになっても』と『淡島百景』の2作を同時執筆中ですが、並行で複数作品を連載する時の思考スイッチの切り替え方があれば教えてください。
思考スイッチの切り替えは未だに下手なままなんですが、それでも先述の『どうにかなる日々』時代よりはマシになったかなという感じです。無茶な生活をしなくなったというか出来なくなったというか。
ーー具体的には、どのような生活スタイルの変化がありましたか?
睡眠をしっかりとることと軽い散歩をするというだけでもだいぶ違います。心身ともに自分の健康を優先させることにしたのも大きいと思います。でもまだまだ現場の方に迷惑をかけてしまっているので、そこは悩みどころです。
ーーちなみにコロナ禍をきっかけとした生活の変化はありましたか? 漫画家といえば、元々ご自宅でお仕事をすることが多い印象がありますが……。
もともと家に引きこもっているタイプなので、コロナ禍きっかけではあまり変わってないですね。コロナ禍でというより、もともとの体調不良や入院でしばらく仕事を休ませてもらったときに動画配信を見たりゲームをすることが増えたなあという変化はありました。
ラジオで流れた言葉を、いつか漫画のタイトルにしようとメモしていた
ーー改めて、今回の個展はどのような流れで開催へと繋がったのでしょうか?
個展はいずれやってみたいという気持ちがずっとありました。今回の開催場所の『リベストギャラリー創』では、今までにさまざまな漫画家の方が個展をやられていて、ギャラリーの方も漫画家の扱いに慣れていらっしゃるという心強さがありました。知り合いの作家さんの青木俊直さんにお話を通してもらって、スムーズに決まりました。
ーー今回の個展タイトルは『まじわる中央感情線』ですが、タイトルに込められたテーマやコンセプトがあれば教えてください。
以前ラジオの交通情報で流れた「まじわる中央環状線が…」という言葉が耳に残っていて、「環状線」の部分を「感情線」に変えていつか漫画のタイトルにしようとメモしてありました。今回の個展開催地である吉祥寺は中央線が通ってるし、個展タイトルにちょうど良いかなとつけてみました。
ーーまさしくエモーショナルな魅力があるタイトルで素敵です。展示会のDMのデザインには、通学スタイルの女の子バージョンと男の子バージョンの2パターンがありますね。イラストのイメージはどのように決められたのでしょうか?
タイトルが先にあって、そこから「電車に乗ってる学校帰りの女の子と男の子」というイメージイラストが浮かびました。
ーータイトルが先にあったということは、タイトル案は最初の構想段階から決まっていたのでしょうか?
実は、タイトルメモ自体もだいぶ後になってから思い出したんです。思い出す前の何ヶ月もの間は「個展のテーマが決まらない」「個展のタイトルはどうしよう」と悩み続けていました……。もっと早くにタイトルメモ案に気づきたかったですね。
ーー志村先生のブログにも投稿されていましたが、スケッチブックに描きためたラフスケッチなども公開予定とあったり、原画の展示以外の見どころも色々と用意されているのかな? という印象を受けました。
ペース配分を完全に見誤っていて「展示するものが全然足りないかもしれない……!」という焦りから「これまで描いた落書きなんかも展示していこう」と決まりました。最初からこうするつもりではなく、行き当たりばったりで進行しています。
グッズもそんなに豊富ではありませんが、出来る限りのことは粘ってやってみようとは思います。
ーー最初から構想を固めていたというよりは、準備段階で色々と試行錯誤しながら進行されているんですね。
そうですね、テーマをどうしようかと悩み続けるうちに月日が流れました。タイムリミットが近づく中で「あっ!前に考えていた漫画のタイトル案が個展にいいかもしれない。」とようやく思い至ったり、「やばいぞ。展示物が足りないかもしれない。あるものをかき集めよう。」となったりと、開催間近になってから決まったことが多かったです。
シリアスすぎず、コミカル時々リリカルに
ーー現在連載中の『おとなになっても』は大人の恋愛がメインテーマで、『淡島百景』は少女たちの青春群像シリーズなので、それぞれメインキャラクターの年齢層が違いますよね。「大人と少年少女、どちらを主役にするのか」をはじめ、この2作は作品の構想を決める時はどのような流れで決められたのでしょうか。
「女たちが集まる場所」という現象が好きなことと、いつか舞台を目指す少女たちの話を描きたい気持ちが漠然とあったので『淡島百景』を描くことになりました。
『おとなになっても』については、『こいいじ』の連載が終了したあとは「次は大人百合でいく」ということしか決めてませんでした。その後、担当編集者さんから「次に描きたいテーマ設定(大人百合)を、次作に生かしませんか?」と提案されたのをきっかけに執筆に至りました。
ーーお気に入りのシーンや演出はありますか?
『おとなになっても』で描いてて楽しかったのは、6巻収録29話の最後の方にある朱里のモノローグ「この女は本当に…っ」のあたりでしょうか。

(『『おとなになっても』6巻p131 ©志村貴子/講談社)
ーー不倫や家庭崩壊という設定をメインに扱いつつも、効果線の力強さがすごくて思わず笑ってしまうような勢いや明るさを感じる演出ですね!
シリアスすぎず、コミカル時々リリカル、という漫画が描けたらいいなあと常々思っています。とにかく漫画として面白くはあってほしいですね。
「このままではいくえみ綾になりたすぎてどうにかなる!」と思いつめた
ーー最後に、他の漫画家や作家の方の作品で影響を受けている作品や、これまでの志村先生の作品に反映されているものがあればお伺いしたいです。純粋にお好きな作品もお聞かせください。
あだち充先生と高橋留美子先生は、理想の短編漫画を描かれる二大巨頭で憧れです。いくえみ綾先生には憧れすぎて、「このままではいくえみ綾になりたすぎてどうにかなる!」と思いつめたことがあります。衿沢世衣子先生の漫画も常に新しいセンスを感じられて大好きです。
ーー特に最近楽しく読まれている作品はありますか?
今一番続きを楽しみに読んでいるのは、藤本タツキ先生の『チェンソーマン』。ジャンプ+に掲載される読み切り漫画も面白いものがたくさんあってよく読みます。
あとは、青木U平先生の『ミワさんなりすます』もコミカルさとスリリングのバランスが絶妙で面白いです。どの先生方にも共通している一番の好きなポイントは、構成力の高さや簡潔なネームセンスかと思います。
ーー漫画家ならではのおすすめポイント、ありがとうございます。また、今年の8月には『おとなになっても』と『淡島百景』の最新巻がそれぞれ発売されましたね。今後も広がる志村先生の世界観を、引き続き読者としても楽しみにしております。本日はありがとうございました!
個展準備でお忙しい中、ひとつひとつの質問に丁寧にご回答いただきました。個展の内容や連載作の今後の展開など、ますます志村貴子先生のご活躍から目が離せません。
今回ご紹介した志村貴子先生の個展情報はこちら
▼『志村貴子 展 まじわる中央感情線』
・開催期間:2022/10/20(木)〜 2022/10/26(水)
・開催場所:〒180-0002 武蔵野市吉祥寺東町1-1-19 リベストギャラリー創
・リベストギャラリー創 HP:http://www.libestgallery.jp/
※上記の個展は10/26(水)をもちまして終了しました。
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▶キャンペーン期間:2022年10月12 日(水)0:00~ 2022 年10月 25 日(火)23:59
※上記のキャンペーンは10/25(火)をもちまして終了しました。