いよいよ2022年10月11日よりテレビ東京他にて『チェンソーマン』アニメが放映され、チェンソーマン第二部も現在連載中の藤本タツキ。しばしば作者コメントやインタビューで、影響を受けた作品や読んで面白かった作品について明言しています。そこで言及された作品は名作であるとともに、藤本タツキ作品内でハッキリと影響を感じさせるものや、今後の『チェンソーマン』の展開を感じさせるようなものも含まれています。
本記事では、藤本タツキがたびたびインタビューなどでその魅力を語る作品16選をご紹介。この記事を読んでさらに深く藤本タツキ作品の世界を味わいましょう!
目次
斬り介とジョニー四百九十九人斬り(全1巻完結)
大アクションスプラッター活劇!
本作は伝説のギャグ漫画とも呼ばれる『ゴールデンラッキー』やハイテンション不条理ギャグ『えの素』などの人気漫画を生み出した榎本俊二による長編アクションです。さらわれた娘を助けるために、村人たちから娘の奪還を頼まれた超剣豪の斬り介とジョニー。敵を斬りまくる。それだけの筋書きでわずか114ページながら、こだわりのレイアウト、大胆な見開きによる豪快な切断劇に魅了されます。
『チェンソーマン』の中国からの刺客・クァンシが一気に敵を斬るシーンは『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』をリスペクトしたと、ジャンプ巻末コメントにて明言されています。このシーンが描かれた回のサブタイトルも「クァンシと魔人達四十九人斬り」となっており、本作の影響の強さが垣間見えます。
えの素(全9巻完結)
超エログロてんこ盛りのナンセンス・シュールギャクの極地!
泣きぼくろがチャームポイントの美人OL・葛原が、前田郷介とその会社の同僚たちにひたすらいじられ続けるどたばたハイテンションギャグ漫画です。不条理かつスピード感あふれるギャグの応酬が魅力でありながら、スタイリッシュなアクション描写にも読み応えがあります。藤本タツキは榎本俊二作品についてたびたび対談やインタビューで言及しています。ジャンプ作家陣が『週刊少年ジャンプ』の誌面で書き下ろす年始番外編でも、藤本タツキは『えの素』のキャラクターを登場させています。
亜人(全17巻完結)
ページをめくる手が止まらない! これぞ圧巻のアクション漫画!
死ぬことがない新生物「亜人」をめぐるアクション漫画です。主人公の高校生・永井圭がトラックに撥ねられ、「亜人」として復活し、追われる身となってしまうところから物語は始まります。アメリカのアクション大作映画を連想させるような豪快な戦闘シーンなど、本格アクション漫画として見どころ満載の作品です。劇場3部作の公開とテレビアニメシリーズが放映され、人気を博しました。
藤本タツキは、ジャンプ巻末にて自らのアクションシーンは下手であるとし、「『亜人』とか見ててもウマくていいな~と羨ましがってます」とコメントしています。
この世界の片隅に(全3巻完結)
広島県呉市(くれし)を舞台に、戦前の1934年から1946年までの約12年間を、主人公・北條すずの人生を追う形で描いた作品です。当時の世相や戦時下の状況を先鋭的な漫画表現で描き、人気を集めました。2016年には片渕須直監督によりアニメ映画化され、第13回メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しています。
藤本タツキは漫画家・沙村広明との対談で「こうの史代先生の描く女の子がすごくエロいなって思ったんです。特に足がエロく感じて。なんでかなと思ったら、足で演技しているからなんですね」と語っています。
波よ聞いてくれ
『無限の住人』の作者・沙村広明によるラジオパーソナリティギャグ漫画!
北海道札幌市を舞台に主人公のOLが、ひょんなことからラジオパーソナリティとしてデビューし、奮闘する姿を描いた作品です。「誰が読んでも大丈夫な漫画」をコンセプトに、豪胆な主人公・ミナレを中心にしたラジオ業界の様子が賑やかに描かれています。
藤本タツキは沙村広明と交流が厚く、『無限の住人』や本作の名前をしばしば挙げ、対談もしています。対談の場で本人も語るように、独自のアクション描写、ヒロインの造形などさまざまな面でその影響が見られます。
プラネテス
近未来宇宙哲学SF漫画!
「スペースデブリ」と呼ばれる宇宙ゴミを拾う仕事についた主人公が、陰謀や事件に巻き込まれていく物語です。壮大な宇宙を描きながらも、ゴミを拾い続ける仕事を続けていていいのか? そう悩み続ける主人公・通称ハチマキが人気を博し、2002年度の星雲賞コミック部門を受賞、アニメ化もされました。全4巻ながら、濃密なSF作品であると同時に、清涼感もある青春作品の側面を持つ本作。今の仕事を続けるべきかなどの悩みや迷いを抱える方には、「自分が何者であるか」というハチマキの悩みに共感できることでしょう。
藤本タツキはインタビューで「王道の少年漫画を描くなら『プラネテス』はみんな読んだほうがいい」と語っています。
魔女(全2巻完結)
驚異の描き込みによるファンタジー!
実写化された『リトルフォレスト』や、劇場アニメ化された『海獣の子供』が有名な五十嵐大介による短編集です。綿密な描き込みと重厚なストーリーが絡み合い、独自の世界観を持つファンタジー作品です。魔女をテーマとしたオムニバス形式の短編集で、4つの異なる世界を描いています。
藤本タツキのTwitterやインタビューなどで本作に言及し、藤本タツキ自ら今までで1番好きな漫画は『魔女』だと答えています。また、『チェンソーマン』後半の衝撃的な展開は『魔女』をかなり参考にした、と種明かししています。
黄色い耳(((胎教)))(全1巻完結)
「耳」から始まる黒ギャル奇想大冒険!
文化庁メディア芸術祭新人賞受賞作家・黄島点心がおくる、耳の奥に広がる世界と黒ギャルを描いた異様な作品です。黒ギャルが耳の子を生み、それが世界を巻き込む大冒険へと飛躍するーー。まさに奇想天外で豪快な物語が魅力です。
かわいらしく描かれた黒ギャルの女の子たちによって、壮大でカオスな世界へと誘われるストーリー展開は『チェンソーマン』を読み慣れた読者ほど親しみやすいかもしれません。藤本タツキからTwitterでおすすめされています。
ギョ(全2巻完結)
ド迫力の異色怪獣パニック超大作!
素早く動く足の生えた魚と遭遇したカップルが、次々と現れる化け物に翻弄される物語です。足の生えた魚や巨大なサメといったバケモノが異常大量発生し、沖縄から東京、日本各地、そして全世界へ波及していきます。2巻完結ながら、ジェットコースターのような展開からの鮮やかに終わるラストが見事です。
藤本タツキはTwitterで、『チェンソーマン』本編の魚の悪魔の元ネタが『ギョ』の怪魚であることを明かしています。
おもいでエマノン
ノスタルジックな一夜の出会いと不思議な少女!
30億年の記憶をすべて引き継いでいる少女・エマノンと出会った人々を描く、梶尾真治原作のSFファンタジーシリーズです。特に、1巻『おもいでエマノン』は思わず旅に出たくなるほどの表現力の高さが魅力のひとつ。作者・鶴田謙二によるこだわり抜かれたコマと描線で、ノスタルジックな夜の船旅が演出されています。1巻『おもいでエマノン』だけでも完結しており、単巻で楽しめる名作としておすすめです。
ジャンプ巻末コメントにて、藤本タツキは続刊の『さすらいエマノン』の電子書籍化を希望していました。
カラオケ行こ!

合唱部部長の聡実はヤクザの狂児にからまれて歌のレッスンを頼まれる。彼は、絶対に歌がうまくなりたい狂児に毎週拉致されて嫌々ながら歌唱指導を行うが、やがてふたりの間には奇妙な友情が芽生えてきて……?話題の作品が描き下ろしを加えて待望のコミックス化!![ 登場キャラクター紹介 ]〇岡 聡実:森丘中学校合唱部の部長。とある悩みを抱えているのだが、なぜか狂児に歌を教えることに。真面目だが毒舌な中学3年生。【得意な歌】教えません。〇成田狂児:四代目祭林組若頭補佐。組長が主催するカラオケ大会の罰ゲームを回避するために歌がうまくなりたい39歳。【得意な歌】紅〇組長:狂児の組の組長。絶対音感がある。1番好きなことはカラオケで、2番目に好きなことは刺青。【得意な歌】タイガー&ドラゴン
『女の園の星』の和山やまによるヤクザと中学生の奇妙な友情!
組長が主催するカラオケ大会の罰ゲームを回避するために歌がうまくなりたいヤクザと、ひょんなことから歌の練習に付き合わされることになった合唱部部長の中学生の漫画です。ゆるいテンポに、乾いたギャグの息づかいが魅力の作品です。エキセントリックな構図は『チェンソーマン』を思い起こす人もいるかもしれません。
2023年に監督・山下敦弘、脚本・野木亜紀子によって実写映画化が決定した本作。藤本タツキはジャンプ巻末コメントにておすすめしています。
9で割れ!!―昭和銀行田園支店(全4巻完結)
実体験から語られる驚愕の銀行員エッセイ漫画!
『釣りキチ三平』で有名な矢口高雄が、30歳で漫画家デビューするまでの12年間の銀行員生活を描いた自伝漫画です。美麗な線で描かれる札勘定(お札の数え方)から、伝票の集計確認まで、実体験に即したテクニックが惜しげもなく描かれています。合間に挟まれる川釣りの様子は矢口高雄ならではのもの。『釣りキチ三平』本編と同じ熱量で描かれており、釣り漫画としても楽しむことができます。
ジャンプ巻末コメントにて藤本タツキは「矢口高雄の自伝漫画はどれも面白い」と紹介しています。
げんしけん(全21巻完結)
大学生オタクサークルの青春ラブコメ漫画の金字塔!
オタクサークル・通称「現視研(げんしけん)」に入部してしまった主人公のまわりで巻き起こる、同人誌作りに明け暮れる青春や恋愛を描いた作品です。漫画やアニメ、ライトノベル、ゲームの他にも、実際に同人誌即売会に足を運んだり、さまざまなオタク趣味を持つ大学生オタクたちのリアルな日常を描いたコメディ作品として人気を集め、累計発行部数は2017年時点で500万部を突破。アニメ化も3回されました。藤本タツキはジャンプ巻末コメントにて、『げんしけん』二代目の最終回までのアニメ化を希望していました。
本連載は2006年に一度完結を迎えた後、2010年より『げんしけん 二代目』と題し期間限定で連載を再開。藤本タツキも魅力をたびたび語る『げんしけん 二代目』は、相次ぐ登場人物たちの告白&告白によるドキドキのラブコメ展開が持ち味です。単行本では10巻以降が、続編の「二代目」にあたります。
あたしンち
思わず笑える日常漫画の決定版!
母・父・長女のみかん・弟のユズヒコの4人家族「タチバナ家」の生活を描いた漫画です。読売新聞の日曜版に連載されていました。みかん・ユズヒコの学校生活や友達とのやりとり、母の友好関係、父の仕事など、いろいろな立場の人の“あるある”な日常が描かれています。
TVアニメやアニメ映画も制作された人気作で、原作は独自のコマのリズム感も魅力のひとつです。藤本タツキはジャンプの巻末コメントで、おすすめの漫画の一つとして挙げています。
ヤコとポコ(全7巻完結)
なぜか泣ける! 不思議な世界での漫画家生活!
『花のズボラ飯』の水沢悦子による少女漫画家とロボットアシスタントの毎日をセンチメンタルに描いた作品です。柔らかな線で描かれる優しくてかわいいキャラクターたちが織りなすドラマが魅力です。
2022年8月に発売された7巻をもって『ヤコとポコ』は完結したのですが、TVアニメ『平家物語』を手がけたサイエンスSARUと『映画 聲の形』の山田尚子監督の最新作となるオリジナルアニメ『Garden of Remembrance(ガーデンオブリメンバランス)』のキャラクター原案を水沢悦子が手がけることが発表されました。今後も新作に注目が集まります。こちらもジャンプの巻末コメントで、おすすめの漫画の一つとして挙げています。
フリクリ(小説)(全3巻完結)
センチメンタルな青春少年ロボットSFアクション!
『フリクリ』は、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を手がけた制作会社・ガイナックスによるアニメ作品です。『チェンソーマン』コミックス累計発行部数300万部突破記念コメントでは、「チェンソーマンは「邪悪なフリクリ」「ポップなアバラ」を目指して描いています!」と藤本タツキ自身が述べています。『チェンソーマン』本編の至る所で、『フリクリ』オマージュを感じられるかもしれません。
今回ご紹介する作品は、アニメを担当した脚本家自身の執筆による小説です。原作が持つ魅力はそのままに、本編では説明されなかった裏設定などが補完されており、アニメを未見の方はもちろん、既にアニメを見たことがある方も新鮮に楽しめる作品です。
終わりに
藤本タツキが影響を受けた漫画はいかがでしたか? 藤本タツキの作風からはすこし意外な作品から近年の人気作まで、どれも独自の視点で描かれた個性的な名作ばかりです。ぜひ今回ご紹介した作品を読んでみて、さらに深く藤本タツキ作品が持つ世界観を味わってください!
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