『フランス書院編集部物語』刊行記念! フランス書院の編集部に迫る独自インタビュー

 設立1975年の歴史ある出版社・フランス書院。官能小説やティーンズラブ小説などを中心に、業界でも独自の地位を確立している出版社です。今回、編集部員たちの日常や業務を描いたお仕事漫画『編集部物語』を刊行! 刊行を記念して編集部の実情などをインタビューで迫ります!

令和に官能小説作ってます フランス書院編集部物語1

令和に官能小説作ってます フランス書院編集部物語1

動画、コミック、ASMR(音声)……エロコンテンツがネットにあふれる時代に、あえて「活字」だけで勝負する官能小説。黒い表紙で知られるフランス書院文庫は1985年に創刊され、既刊は2,600冊を超える。新人の女性編集者・大泉ましろは、ヴェールに包まれた出版界の秘境で働くことになるが、そこに待っていたのは想像を越えた世界だった――

ーー小説やライトノベルのイメージが強いですが、今回オリジナルで漫画を制作することになった背景やきっかけがあれば教えてください。

 官能小説を読んだことが一度もない、そもそも存在すら知らないという若い人が増えています。どのような小説なのか、そこで働く人たちはどのようなことをしているのか。漫画という形にすれば興味をもってもらえるのではないかと思いました。

 また現在、フランス書院文庫編集部では「編集者」を募集中なので、リクルート活動の一環としてお仕事漫画を作りました。性愛を扱う出版社の最前線で働いてみたい、という方からのご応募をお待ちしています!

紙の本と電子書籍では、売れるジャンルが全然違う!?

ーーフランス書院文庫作品の読者の年齢層はどれくらいですか?

 紙の本だと50代以上の方が多いですね。eブックス(電子書籍用のコンテンツ)になると、30代くらいの読者が多くなります。
 また、紙の本では年上の女性に癒やされるような作品が人気傾向ありますが、eブックスになると人気ジャンルが変わります。eブックスでは、あえて自分の好きな女性が奪われるようなシチュエーションや、ちょっとハードな倒錯系の作品が人気です。同じ男性向けでも、読者の年齢層で人気の作品傾向は変わってきますね。

 紙の方では、読者のメイン層が50代以上ということもあり、20代のヒロインなど若い女性は不人気です。年齢差がありすぎて、恋愛的な対象に入らないということでしょう。また、未亡人やシングルマザーのような健気にがんばる女性を応援する設定もテッパンの人気です。

ーー作品づくりに社会情勢も反映されているのでしょうか?

 最近世の中でも「貧困女子」みたいな言葉が出てきたり、経済的に苦労している女性について問題提起される場面が増えてきましたよね。離婚率の上昇などもニュースになっていますが、そのような社会情勢を反映することは多いですね。

ーーどのような展開が人気ですか?

 苦労する女性を支えて、なにかしらの見返りや癒やしをもらう、といった安定した展開が求められます。どんでん返しよりもハーレムエンドなど、安心感のあるストーリーが好まれます。時代劇小説でも、勧善懲悪の定番ストーリーが好まれるのと同じだと思います。実は、時代劇小説と官能小説は読者の年齢層が近いのもあって、親和性が高いんですよ。

スケジュール、やりがい……編集部の実情に迫る!

ーー今回の漫画には実際の企画会議の様子がリアルに反映されているのでしょうか?

 かなりリアルに反映されていると思います。たまにフッと我に返って、立派な大人がこんなことを真剣に話し合っていいのだろうか? と思うときもあります。
 ただ、当事者たちは本当に大まじめで……売るためにどういうコピーや装丁にすればいいのか、何時間も真剣に議論を重ねています。

ーーたくさん企画出しをするなかで、そのなかでも大体どれくらいの割合の企画が出版までこぎつくのでしょうか?

 タイトル会議はあるのですが、「企画会議」というものはありません。著者さんと担当編集が「やりたい!」と言えば、そのまま本になることが多いです。

ーー編集部の1日のスケジュールを教えてください。

 フレックスタイム制なので、編集者の出社時間は各々違います。朝早く来る者もいれば、昼から出社する者もいます。在宅勤務も導入されているので、漫画のように会社で全員がそろう機会は少ないかもしれません。ただ、タイトル会議などは日時を設定して、皆で話し合うようにしています。

 朝はまずはメールチェックから始まります。著者から届いた原稿、イラストレーターさんから届いたイラストに感想などを述べます。午後は実務的な作業をすることが多いですね。校正者から届いたゲラをチェックしたり、原稿を印刷所に入稿します。その合間に会議を挟んだり、著者さんと会って打ち合わせをしています。

ーー編集部員としてのやりがいを教えてください。

 フランス書院の作品の多くは、固定読者に支えられています。コロナ禍で書店への客足が減ったときも、売り上げはあまり落ちませんでした。そういった長年のファンの読者たちから「おもしろかった」「また買いたい」などの感想をいただいたとき、がんばろうと思います。
 また、人間の欲望に向き合うことが作品づくりのメインなので、今、何が読者に受けるのか、どういうシチュエーションに萌えるのか。性愛の最先端を知ることができるのがおもしろいと思います。

ーーちなみに、編集部員に向いている人材とはどのような方でしょうか?

 やはり、コンテンツを作りたいという熱意が強い人です。作家を見つけるために同人誌の即売会イベントに行って、次の才能を見つけるという地道な活動も大事です。
 人気のイラストレータさんになると、まず声をかけた時点で返事が返ってくるのが半分以下です。お仕事を受けてくれるとなると、そこからまた確率は下がります。そのような心折れる経験が何度もあるようななかで、それでも食いついて「良い作品を作りたい」とがんばれる人が編集部員として向いています。

ーー営業部の意見と編集部の意見や方向性が割れることもあると思いますが、そのような場合はどのように着地させてるのでしょうか?

 編集部の作りたいという意見が優先されることもあります。売れるためにはヒットコンテンツの中身をなぞるのも大事ですが、独自のおもしろさや新しさはないといけないと思っています。

ーー編集部員を育てるときに大事にしている軸などはありますか?

 細かい相談ごとは置いといて、とりあえず自分でやってみたら、と考えています。作品のことは担当編集が一番知っているはずです。実際に作品として出してみて、売上につながらなかったらまた次で活かせば良い。修行や下積みをするのも大事ですが、まずは著者さんと一緒にとことん悩み抜き、工夫して作品を世に出してみる、ということが大事だと考えています。

ーー失敗は問わず、チャレンジをたたえる社風なんですね!

 紙に比べてeブックスは在庫リスクもないので、コンテンツを生み出すリスク自体が下がったのも大きいですね。

女性向け作品のキーポイントは、イケメンのお金持ち!

ーー最近人気の悪役令嬢や溺愛ジャンルも色々と制作されていますよね。女性向けの作品は好調でしょうか?

 女性向けのeノワールを始めてから、女性からの小説投稿も大幅に増えました。官能小説の編集部と言えば、男性ばかりというイメージがあるかもしれませんが、フランス書院自体は女性の編集者の方が多いぐらいです。

悪役令嬢ですが、お助けキャラの隣国公爵令息と幸せ結婚フラグが立ちました。

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ーー女性も活躍されているんですね! 女性の読者からはどのような反応がありますか?

 女性のファンは、電子書籍書店のレビューに意見や感想を書かれることも多いので、レビューを参考にしています。
 作品の特典として書き下ろしのショートストーリー(SS)を付けることも多いのですが、原作ファンは加筆を喜ばれますね! 「続きを読みたかったので嬉しいです」といったお声をいただいています。

ーー女性の読者からは、どのような作品が好まれていますか?

 溺愛や悪役令嬢といった巷で人気のジャンルはもちろんですが、超イケメンでお金持ちで冷酷な王子や伯爵が、健気なヒロインと結ばれる展開が人気です。

ーー「イケメンでお金持ち」は大事なポイントですか?

 あくまでファンタジーなので、夢がないとだめですね。逆に、お金がない設定は夢がないからとウケません(笑)。今は、どれだけお金持ちかのスケールが大事です。
 周囲からは冷酷と誤解されているけど、本当はそうじゃない王子。真面目で健気なのに家が没落してしまったり、いじわるな姉に追いやられたり……と不運な運命に陥れられるヒロイン。そんな二人が出会って、女性が溺愛されてハッピーエンド、という展開がテッパン人気ですね。

治癒の力が尽きた少女は敵国の魔術師に拐われる

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ますます人気を増しているeブックス

ーー2022年からセクシー系の青年コミックを中心に『ラ・フランスCOMICS』として精力的にコミカライズやコミック作品を出版されていますが、2023年以降もどんどん力を入れていく予定でしょうか?

 eブックスの人気は増しています。いわゆるバズった作品はコミカライズしていきたいです。
 特に「なろう系」と呼ばれる作品が人気で、『俺の妹が最高のオカズだった』(著:風見源一郎)は電子書籍オンリーで発売していますが、爆発的な売れ行きを見せています。

俺の妹が最高のオカズだった1

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ーーちなみに、コミカライズに選ぶ作品の条件などはありますか?

 身もふたもないですが、まずは売れているかどうかの数字的な部分は前提としてあります。ただ、原作の人気が高くても必ずしもコミカライズの売上は比例しないこともあります。どんな作品が当たるのか、やってみないとわからないのは編集部としておもしろいですね。もちろん、ストーリー性があるかどうかも大事です。

ーーTL小説も多くあるなかで、女性向けのコミカライズなども予定していますでしょうか?

 現時点ではまだ具体的な作品名は言えないのですが、女性向けのeノワール作品のコミカライズは予定しています。今年は特にここに注力したいと考えています。

終わりに

 編集部員としてのやりがいから、実際の売上に繋がる作品の詳細傾向までディープな部分まで迫らせていただきました。男性向けだけでなく、女性向けの作品も幅広く取り扱う歴史ある出版社の新しいチャレンジも見逃せません! 今後もフランス書院の小説や漫画をお楽しみに!

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