2022年10月からMAPPA制作で『チェンソーマン』アニメ放映されることが発表され、チェンソーマン第二部が現在連載中の藤本タツキ。フランスの国際漫画祭の開催地であるアングレームでもチェンソーマン展が開催され、海外からの期待も高まっています。
本記事ではそんな勢いが止まらない藤本タツキ作品を紹介します。
執筆時期をタイトルに冠した初期短編集『藤本タツキ短編集 17-21』。最初の連載と交互して描かれた時期の作品を集めた『藤本タツキ短編集 22-26』。初の連載作品『ファイアパンチ』と藤本タツキの名を少年誌でメジャーにした『チェンソーマン』。発表と同時に話題を呼んだ中編作品『ルックバック』と『さよなら絵梨』といったこれまでの全6作品をご紹介します。
進化し続ける藤本タツキの世界観をお楽しみください!
目次
初期短編集
17歳で執筆された最初期の作品から現在までの軌跡である『藤本タツキ短編集』全2巻をピックアップ! 現在までの連載作品につながるアイディアの萌芽がすでに多数見出されることでしょう。
藤本タツキ短編集 17-21(全2巻完結)
突然のシリアス、裏切り、衝撃的なラストの三拍子が揃った初期作品。
宇宙人に捕食され、人類が壊滅寸前の世界を描いた『庭には二羽ニワトリがいた。』の衝撃的な設定は『チェンソーマン 第二部』を思い起こさせます。
初期らしい粗さを感じさせつつも、勢いと感情がほとばしる『佐々木くんが銃弾止めた』。『さよなら絵梨』に通じる吸血鬼作品の『シカク』。ラブコメが暴走していく『恋は盲目』。
いずれの作品も初期作ながら突然のシリアス、裏切り、衝撃的なラストの三拍子が揃った作品群になっています。長編作品しか読んだことのない方にもおすすめの作品集です。
藤本タツキ短編集 22-26(全2巻完結)
ユーモアのなかに哀しみが見え隠れする世界を描く個性的な作品集!
海辺の街で暮らす少年と人魚の出会いを描いたライトなラブコメ『人魚ラプソディ』。起きたら女の子になっていた『目が覚めたら女の子になっていた病』。世界を滅ぼす災いの元凶と恐れられる妹のナユタと兄の物語『予言のナユタ』。のちのルックバックの原型となる絵画の才能をめぐる『妹の姉』。
ここに収められた作品は、熱いドラマや笑ってしまうようなギャグとのはざまで、自分自身が何者かに変わってしまい、誰かを傷つけてしまうことに怯え続ける登場人物たちを描いた物語です。
いずれもファンタジーでありつつ、世の中にあふれる理不尽さを告発するヘビーな読み応えの作品になっています。
注目の中編作品
藤本タツキの名を世間に広く知らしめた『ルックバック』。衝撃的なラストが話題となった『さよなら絵梨』。長編作品に並ぶ、中編作2作品をご紹介します。
ルックバック(全1巻完結)
漫画を描くことで出会った、2人の少女の運命が翻弄されていく中編読み切り作品です。
小学校の卒業式から高校、美大への進学、そして連載作家へと、長大な人生の時間をわずか143ページの作品に濃縮し、ありえたかもしれない時間軸を混濁させたストーリー構成で描かれる本作。
藤本タツキはこの一作で、読者のみならず漫画家からも絶大な反響と支持を勝ち取り、漫画家としての地位をより確かなものにしました。
また『チェンソーマン』の続編が期待される中での執筆でありながら、『インターステラー』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などの映画作品を思い起こさせる展開や、藤本タツキと同年代の川勝徳重、愛須冷蔵といった画風の大きく異なる漫画家のアシスタント起用など、さまざまな意味で異色の挑戦作でもありました。
本作のラスト1ページからは、漫画家・藤本タツキとしての決意表明を感じずにはいられません。
さよなら絵梨(全1巻完結)
なにが真実でなにが虚構なのか、異色の映画製作ボーイミーツガール漫画!
余命わずかの母親が亡くなる様子をスマホで撮影し、それを学校で上映した主人公と謎の少女との出会いからはじまる作品です。
少女・絵梨との出会いをきっかけに、映画を共同制作することになった主人公・優太。映画をモチーフにした独特の演出方法や先の読めないストーリー展開で、摩訶不思議な読後感を味わえます。
今作では表現方法が突出して映画を意識させるものとなっており、冒頭から同アングルの固定コマが目を引きます。最大では、8ページ(32コマ)にも渡って全く同じアングルの絵が続き、スマホの長回し撮影を意識させた表現が描かれています。
作品タイトルは、2008年の異色ラブストーリー映画『ぼくのエリ 200歳の少女』への目くばせとなっており、藤本タツキ作品史上もっとも映画愛を感じさせるものになっています。
連載長編作品
怒涛の展開が魅力の『ファイアパンチ』。現在もジャンプ+に掲載紙を移し、続編が連載中の『チェンソーマン』。藤本タツキの真髄ともいえる長編2作品をご紹介します。
ファイアパンチ(全8巻完結)
文明崩壊後の雪に包まれた世界を舞台に、再生能力を持つ少年・アグニの活躍を描いたダークファンタジー。
藤本タツキ初の商業連載作でありながら、各巻ごとに読者の裏をかいてジャンルを変えていく衝撃的な作品になっています。他者を理解しようともがくアグニの死闘は、どこか切なさが混じります。
物語の着想は『アンパンマン』にあったと著者が語る本作。「自らの身体を食べさせる」、「食べられないはずの自分たちが誰かに食べられる」という設定はデビュー作『庭には二羽ニワトリがいた。』や『チェンソーマン』にも通底しています。改めて『チェンソーマン』一部完結を経て本作を読み返すと、さまざまな発見があるかもしれません。
チェンソーマン
巨額の借金を抱えた主人公・デンジが、異形の悪魔が人々を襲う世界を駆け抜けるバトルアクション漫画です。次から次へと死んでいく登場人物たちによる殺伐とした展開に目が離せません!
主人公が放つ自由な口語、裏切りまみれの青春、どれも新時代の新感覚の漫画であることを読者に感じさせます。
主人公の名前は弐瓶勉『ABARA』の主人公・駆動電次から、一部のサブタイトルと演出では榎本俊二の漫画『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』を引用。
漫画家・沙村広明との対談では、彼へのリスペクトを公言するなど、『チェンソーマン』本編に埋め込まれたさまざまなオマージュは、漫画好きの読者心をくすぐります。
また、本作は第66回小学館漫画賞少年向け部門を受賞し、翌21年には海外の漫画賞・ハーベイ賞BestManga部門を受賞するなど、その人気は国内にとどまらない広がりを見せています。
終わりに
本記事では、衝撃を受ける展開や演出が魅力の漫画家・藤本タツキの作品をご紹介しました。
どれも漫画界に波紋を呼び、独自の世界観を持っています。力強い個性を持った作品の中から、お気に入りを探してみてください。
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