読み切りホラー漫画短編21選 本当の恐怖がここにある……

 本記事では、ホラー漫画の入口にピッタリの読み切り型のホラーを中心に、オムニバスホラー漫画から王道のサイコホラーまで幅広くご紹介します。2022年最新スプラッタホラー漫画『SUBURBAN HELL 郊外地獄』、カルトホラー漫画の『復刻版 怪談人間時計』、心霊現象が襲い来るオカルトホラーなど、さまざまなジャンルのおすすめホラー漫画を21作品ピックアップしました。

目次

じわじわ不安が迫りくるサイコホラー漫画

 足元や背後から侵食されるような恐怖感を味わいたい方におすすめ、サイコホラー漫画8作品をご紹介します。

うぐいす祥子『悪い夢のそのさき…』(全1巻完結)

悪い夢のそのさき…

悪い夢のそのさき…

家出した父親の部屋は、大人気ゆるキャラ・タマッシーのグッズで溢れかえっていた。残された地図に記された場所で待っていたのは…? 可愛さとグロさのギャップ。想像力を触発するオチ。うぐいす祥子の脳汁(エッセンス)が詰まった10編を収録した短編集第2作! 本当の悪夢は、読み終えた後から始まる…。

 かわいいとグロテスクがひしめく、うぐいす祥子の世界へいざなわれます……。
 『ときめきのいけにえ』や『闇夜に遊ぶな子供たち』などで話題になったうぐいす祥子のホラー短編集です。無常観溢れる作風で、絶望さとユーモアが同居する独自の読み応えが魅力的。作中の『囚われ人』は、本作でもっともスプラッター描写に容赦がない作品です。
 オカルティックなはずなのに、思わずツッコミを入れたくなる超常現象の数々に笑いすら感じる本作。凄惨な描写でも、さらりと読める不思議な魅力を持つ作品です。

阿部共実大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集』(全1巻完結)

大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集

大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集

奇才・阿部共実の原風景を収めた作品集。「空が灰色だから」単行本未収録のオールカラー2話(「灰色」「乙女心」)、web連載作「ドラゴンスワロウ」、デビュー作「破壊症候群」、描き下ろし作「デタジル人間カラメ」、さらに「あつい冬」「大好きが虫はタダシくんの」を収録。

 青春群像劇『潮が舞い子が舞い』の阿部共実による、ストレートな感情と言葉がつまった短編集。独自のユーモアと、グロテスクな会話劇による毒々しさがたくさん詰め込まれています。
 会話のすれ違い、皮肉や嫌味。強烈でエッジの効いた物語の数々に、人間の怖さを感じるホラー漫画です。ポップな作画で描かれることによって、なお不気味さが際立ちます。阿部共実作品世界の濃厚な物語をぜひお楽しみください。

カラスヤサトシ『おとろし』(全1巻完結)

おとろし

おとろし

「この世」と「あの世」、「善」と「悪」、「夢」と「うつつ」。両者相見える世界で湧き立つ静かな怪奇を紡いだ異色のショート・ホラー24作を収録。いつの世も、げに恐ろしきは、人の業なり…。

 エッセイ漫画の名手がおくる、この世ならざる世界を描いた短編ホラー作品集。
 カラスヤサトシといえば、日常四コマ漫画や、ルポ漫画など自身が主人公の作品を中心としたエッセイが有名。本作もまた、日常にある違和感を膨らませるところから始まります。あの世とこの世の境に迷い込んでしまうような、言い表せない恐怖が見どころ。
 じっとりした日本ホラーの湿度を感じたい方におすすめです。

石上愛実『言無しの掟』(全1巻完結)

言無しの掟

言無しの掟

あなたが好きになったその人は、本当にヒトですか?『言無しの掟』小さな頃からモノの声が聞こえる美々子。けれど、けしてモノとロをきいてはいけない、魂を食われ命を落としてしまうから…という掟を守っていた。14歳になったある日、鑑賞魚を飼うことに。美少年にとして目に映るその魚に、美々子は密かな想いを寄せる。口をきけなくてもいい。一緒にいられるだけで…。他にも以下の作品を収録。『ジャノメ』『影武者』『黒穴』『死カンパニー』『反転』『アメフラシ』『幻妖団』『マリエ』『七の月』。日常にひそむ恐怖や小さな出会いから広がる不条理世界。心をざわつかせる10篇の物語に今夜は怖くて眠れなくなってしまうかも?

 繊細な恐怖、感受性と想像力が爆発するホラー漫画。
 一部のホラーファンの間で名を馳せる漫画家・石上愛実の現在唯一のホラー短編集です。うまく世の中とつながることのできない少女たちが、どこか遠くの世界とつながってしまう。そうした怖さ、寄る辺のない孤独感が独自の想像力で描かれています。
 作品内の『黒穴』が12ページながら、思いがけない話の展開に圧倒されます。どれも単なるホラーと呼ぶには惜しいほど、詩情に溢れた作品です。普通のホラーに飽きた人にこそおすすめしたいサイコホラー作品集です。

中山市朗/千之ナイフ『怪異実聞録 なまなりさん』(全1巻完結)

怪異実聞録 なまなりさん

怪異実聞録 なまなりさん

新耳袋の中山市朗が放つ長編怪談の傑作「なまなりさん」を耽美ホラーの旗手・千之ナイフがコミカライズ。夜中に一人で読む場合は怪現象にご注意ください。

 邪悪さがドミノ倒しのように結びついていく展開に魅了される、ホラーの名手がおくる耽美ホラー漫画です。
 ホラー漫画家・千之ナイフによる、中山市郎の小説を原作にした作品です。原作のイメージを崩すことなく流麗な線で髪の毛一本一本丹念に描かれる美人画と、怪しい耽美な絵柄も見どころの一つ。原作小説の雰囲気のまま、読みやすいコマ割りに成功しています。サイコホラーサスペンスが好きな方にもおすすめの作品です。

望月峯太郎『座敷女』(全1巻完結)

座敷女

座敷女

雷のなる深夜、森ヒロシはドンドンという音で目が覚めた。外を覗(のぞ)いてみると、隣の部屋の前に、ロングコートにロングヘアー、紙袋とバッグを提げた異様な大女が立っていた。翌日から、突如その大女に付きまとわれるようになった森。サチコと名乗る女の行動は次第に異常さを増してきた。彼女の目的は何? そして彼女は何者!? ひたひたと迫りくる恐怖に、あなたは耐えられるか? 望月峯太郎の傑作ホラー!

 異様な大女につけまわされることになった青年の苦悩を描いた、サイコホラー漫画の金字塔。世紀末の恐怖を描いたSFサバイバル漫画『ドラゴンヘッド』や、爆走する愛を描いた青春漫画『バタアシ金魚』を生み出した漫画家・望月峯太郎の大傑作ホラーです。
 都市伝説の「口裂け女」のような怪物じみた女の、常軌を逸した行動のオンパレードにおののきます。衝撃のラストは薄気味が悪く、嫌な後味が残り続けます。トラウマ必至の不条理な展開をぜひお楽しみください。

花輪和一『風童-かぜわらし-』(全1巻完結)

風童-かぜわらし-

風童-かぜわらし-

山があり、川があり、里がある。それこそが日本であり、そこには日本ならではの美しい四季が存在する。そんな日本の原風景を鬼才・花輪和一が独自の視点で切り取る!

  緻密な線画と想像力で描かれる日本の原風景……舞台は戦国時代の日本。毎日の労働や死への恐れに悩む主人公が、不思議な能力を持つ少年たちと出会う連作短編集です。妖艶なタッチや、瑞々しい描写、壮大なスケールで想像力を広げた物語です。
 不可思議な世界と、死よりも恐ろしい業苦がすぐ隣り合わせに描かれている本作。この世に生き永らえる故の不安が恐ろしげに描かれています。恐怖が前面に描かれた作品ではないものの、ほんとうに恐ろしいことは死よりも永遠の孤独かもしれない、と考えさせられます。

ききやま/マチゲリータ/富沢ひとし『ゆめにっき』(全1巻完結)

ゆめにっき

ゆめにっき

2004年より公開された伝説のフリーゲーム「ゆめにっき」がコミカライズ化!!暗く、不思議な空間にとらわれてしまった少女。この場所から抜け出すために、彼女の目の前にある不思議な扉を開いて探索をし始めるが…。

 不思議で狂気じみた、予測不能の世界へ。SF×美少女を描いた『エイリアン9』の富沢ひとしによる、フリーゲーム『ゆめにっき』のコミカライズ作品です。
 化け物が潜む、不思議で暗い空間を少女がさまよう物語。原作ゲームの雰囲気を活かしながら、斬新な漫画表現も見どころです。グロテスクな怪物が現れ、主人公を殺める場面は言いようのない不安に襲われます。何度襲われても再びゲームのようにやり直しが行われ……?
 言語化できない不可解さと陰鬱な雰囲気など、独自の読み応えを持つ作品です。

猟奇的な描写が頭に残る!スプラッタホラー漫画

 猟奇的描写が強く印象に残るスプラッタホラー漫画3作品をご紹介します。

金風呂タロウ『SUBURBAN HELL 郊外地獄』(全1巻完結)

SUBURBAN HELL 郊外地獄

SUBURBAN HELL 郊外地獄

360度パノラマのVRの臨場感に飲まれてゆく男。マッチングアプリで憂さ晴らしする男。忘却の彼方からトラウマを蘇らせる男。何者かわからないものに日常を蝕まれ続ける女。ゾンビの溢れる街でデリバリーに励む男。積年の恨みつらみが臨界点を突破する街……よくある日常の風景がほころぶとき、その僅かな隙間から怪異と狂気に彩られたアメーバ状の恐怖が侵入する! 令和のホラーコミック界を牽引する蒼き新星の初単行本がついに刊行。

 圧倒的な画力で表現される、日常を侵食する恐怖が恐ろしい令和最新ホラーコミック。郊外で鬱屈する中年男性を中心に描いた作品集です。緻密な描き込みで、街に漂う闇の風景が描かれているのが特徴的です。
 デリバリー、VR、マッチングアプリなど現代問題を扱いながらも、アートのような圧倒的な漫画表現に魅了されます。特に、スナッフフィルムを見せられているかのような『VR地獄』は極限状態の閉鎖的な雰囲気が楽しめます。陰惨でグロテスクですが、ページをめくる手が止まらないおもしろさがある最新ホラー漫画表現の宝庫です。

関よしみ『血を吸う教室』(全1巻完結)

血を吸う教室

血を吸う教室

イジメの代償に卒業式の日突然教室に閉じ込められた生徒たち。生きて出るには13人分の魂を神に捧げなくてはならなくて―!?

 ホラーを中心に活躍中の、関よしみによるホラー短編集です。収録作『血を吸う教室』が元祖バトル・ロワイアル作品として有名です。いじめの標的となった中学生が「神さま」と13人分の魂を捧げる契約を交わします。そして卒業式の日、裏切りによる惨劇が幕を開けます。衝撃のラストは読者に絶望感を与える展開です。
  その他収録されている短編2作も、苦虫を噛み潰したような印象が胸に残ることでしょう。

呪みちる『青空の悪魔円盤』(全1巻完結)

青空の悪魔円盤

青空の悪魔円盤

暴走する過剰な愛と憎悪!思春期の乙女たちが持つ過剰な妄想を呼ぶ怪奇と恐怖。奇妙なストーリーと重厚なペンタッチで描くゴシックホラーに、怪奇大好きのミュージシャン&小説家・大槻ケンヂやホラー漫画の達人・日野日出志、丸尾末広らも大絶賛!

 重厚なタッチで描かれたビジュアル表現が光るアンダーグラウンド・ゴシックホラー。恐怖をあおるストーリーの数々が、重い爪痕を読者に残す短編集です。
 ホラー漫画の巨匠・日野日出志や、耽美なオカルト漫画を得意とする人気漫画家・丸尾末広らも大絶賛も納得の絵柄に引き込まれます。タイポグラフィーと絵を組み合わせて遊んだり、さまざまなビジュアル表現が楽しめるのも本作の大きな魅力です。

根強い人気のカルトホラー漫画

 ホラー界でも根強い人気を持つ、カルトホラー漫画。一時は入手困難とされた幻の作品や伝説的漫画など、5作品をご紹介します。

徳南晴一郎『復刻版 怪談人間時計』(全1巻完結)

復刻版 怪談人間時計

復刻版 怪談人間時計

これは’読むドラッグ’である。マニアの間では10万円以上の値段で取り引きされていた奇書「人間時計」が、ついに復刊。もう一つの怪作『猫の喪服』も同時収録で、消えた天才マンガ家・徳南晴一郎の世界が今よみがえる。

 まさに怪作……消えた天才漫画家が描く、伝説的怪奇ホラー。
 60年代に貸本として出版された作品の復刻版です。時計屋の一人息子「声タダシ」は、とある事故から人間嫌いになり、学校を中退。そこから彼の現実と妄想が混同された、歪な冒険がはじまります。
 SF怪談として出版された本作。登場人物の行動原理が破綻しており、奇々怪々な展開の連続で、パンチが強い作品です。めまいに襲われるような伝説のカルトホラーを味わってみませんか?

江戸川乱歩/丸尾末広『パノラマ島綺譚』(全1巻完結)

パノラマ島綺譚

パノラマ島綺譚

2009年手塚治虫文化賞受賞作! これぞ、猟奇と怪奇とエロスに満ちた、日本漫画の新たな宝モノ! 巨匠・江戸川乱歩の代表作にして最大の問題作を、エロティックでグロテスクな作風で世界的人気を誇る丸尾末広が、奇跡の完全コミック化!

 エログロナンセンスな作風がサブカルチャー界隈で大人気の丸尾末広による、江戸川乱歩作品の漫画化作品です。2009年に手塚治虫文化賞を受賞しました。
 酒池肉林の人口楽園を実現するために、作家志望の青年が奇妙な入れ替わりをたくらむストーリー。とりわけ本書後半で描かれるパノラマ島の建造物たちに圧倒されます。大庭園、大階段、大酒池肉林……。まさに豪華絢爛たる光景を、繊細なタッチながらも豪快に表現した作品です。奇妙でグロテスクな楽園の裏側もしっかり描かれており、言い表せない不安と恐怖を感じることでしょう。

楳図かずお『ねがい』(全1巻完結)

ねがい

ねがい

友達とあまり遊ばず、ひとりでいることが好きな少年・等。ある日、ゴミ捨て場で頭の大きさくらいの木の切れ端を拾ってきた等は、そこから自分だけの「ロボット」を作り上げる。何本ものクギを打ち付けた歯、縫い跡の目立つ髪や眼など、はた目には不気味な人形に‘モクメ’と名付けた等は、やがて「本当に動いたらなあ」と思うようになり、宇宙のエネルギーに念力をかけて願いごとを叶えようとするが…

 センチメンタルとノスタルジーが融合した、壊れゆく美しさが魅力。恐怖漫画の帝王・楳図かずおの傑作短編集です。
 友達のいない少年が、人形を作り空想の友達として名前をつけて遊ぶようになります。ですが、人間の友達ができた少年は人形を粗末に扱うようになり……。
 おどろおどろしい表紙の通り、尾を引く恐怖が感じられます。いつか失うものへの郷愁も描かれており、楳図かずお作品で繰り返し描かれるテーマである離別が本作にも反映されています。恐怖と喪失感、そして楳図かずおの魅力に改めて気づかされる作品です。

水木しげる貸本漫画集 恐怖の遊星魔人 他 水木しげる漫画大全集』(全1巻完結)

貸本漫画集 恐怖の遊星魔人 他 水木しげる漫画大全集

貸本漫画集 恐怖の遊星魔人 他 水木しげる漫画大全集

幻の貸本が、ついに登場! 表題作「恐怖の遊星魔人」は、著者でさえ出版されたのかどうかが長年分からなかったという伝説の一編。さらにカラーページが初めて再現された「永仁の壺」「サイボーグ」や、「地獄の水」「髪」を加え、今では入手困難な5作品を収録! ただの復刻ではない、超絶美麗なハイクオリティデジタルリマスターによってプレミアムな希少本が完全復活!!

 伝説とされていた、水木しげるの貸本時代の作品を集めた作品集です。いずれも60年以上前に描かれた作品でありながら唯一無二の個性を持っています。
 『ドキュメンタリー怪談 サイボーグ』は宇宙飛行士になるため人体改造を受ける男の話です。しかし人体改造を受けた結果は……。水木しげる作品には飄々としたユーモアの裏側に、どこか悲しみが描かれているのが特徴です。生の深淵をのぞいてしまったような恐ろしさに満ちており、読み応えがある傑作が揃っています。水木しげる入門としてもおすすめの作品集です。

日野日出志『地獄の子守唄』(オリジナルカバー版)(全1巻完結)

地獄の子守唄(オリジナルカバー版)

地獄の子守唄(オリジナルカバー版)

私の名は日野日出志。怪奇と恐怖にとりつかれたまんが家である、、、から始まる作者の告白的作品。自伝とも夢想とも言える形式の中で怪奇と猟奇が集約された傑作。ラストの3日後に君は死ぬと読者に指差して言い放つ狂気は何物に代え難い。その他「蝶の家」「七色の毒蜘蛛」「白い世界」「博士の地下室」「どろ人形」などの傑作揃いの1冊。1971年初版時の表紙を可能な限り再現した記念版です。初版本の表紙でコレクションしよう!

 ホラー漫画の巨匠・日野日出志の初期短編集です。怖い顔、怖い人、怖い風景、怖い現象。そのすべてが揃っています。おどろおどろしさを感じさせながらも、どこかユーモアを感じさせるデフォルメの効いた絵柄が特徴的です。日野日出志のキャラクターは、まさに一癖あるかわいさも魅力。
 収録作品のなかでも、人気作は『地獄の子守唄』です。「私の名は日野日出志。怪奇と恐怖にとりつかれたまんが家である」との告白からはじまり、禁じ手ともいえる手段で恐怖の渦中に落とし込むインパクトのあるラスト! 作品の古さを感じない新鮮な恐怖は、いまだ魅力を放ち続けています。

心霊現象こそ真骨頂……オカルトホラー漫画

 化学では解明することができない心霊現象。おすすめのオカルトホラー3作品をご紹介します。

高港基資『顔を見るな』

顔を見るな

顔を見るな

安すぎる車の本当の理由……引っ越し先の和室に潜むおばあさん幽霊の謎……蠢くゴミ袋の秘密……公園のトイレで起こる奇妙……「見えて」しまう男の誤差……など思わず背筋が凍る、世にも奇妙なホラー作品集!(C)高港基資/少年画報社

 作中に引き込まれる、”ホンモノ”の心霊系恐怖漫画。『恐之本』や異本シリーズなど、ホラー漫画を得意とする漫画家・高港基資のオカルトホラーアンソロジーです。
 急に驚かせる作風ではなく、じわじわと追いつめられるような語り口が魅力です。主人公は対抗することもできず、怪異からは逃げるしかありません。
 丁寧に書き込まれた作画による、90年代の怪しげな雰囲気も魅力の一つ。的確なデッサン力を生かした背景と潜む霊に、読者は恐怖することでしょう。日常に何かがひそんでいるような気配に背筋が凍る作品です。

雨がっぱ少女群『ひとりかごめ』(全1巻完結)

ひとりかごめ

ひとりかごめ

ホラー漫画界の新星・雨がっぱ少女群が描く、至極の短編集。見えない何かを相手に今日もひとり、かごめの輪に座る――。一周目:消費者の呻き二周目:工場勤務三周目:ザリガニ四周目:無数の孤独五周目:百円の眺望六周目:ペット七周目:ひとりかごめ八周目:地図九周目:夢うつつ十周目:轍は闇に呑み込まれ十一周目:現象十二週目:遺された調理法掲載時のカラーページ全収録!!!★単行本カバー下画像収録★

 綺麗な女の子と、理不尽な怪異が中心となって描かれたホラー作品集です。丁寧な書き込み・特異な絵柄・端正なストーリーの三拍子が特徴で、ホラーに不慣れな人でも安心して読むことができます。
 グロテスクな描写が目立つ話でも、綺麗な作画によって官能的な雰囲気に魅かれる人も多いはず。美少女たちが苦悶の表情を浮かべている所さえ美しく見えるさまは、まさに耽美! 『ひとりかごめ』のコミカルなオチも愛らしく、ホラー初心者にもおすすめできる作品です。

オガツカヅオ『りんたとさじ』(全1巻完結)

りんたとさじ

りんたとさじ

眼鏡が印象的な青年‘りんた’と、明るく情熱的な女の子‘さじ’。恋人同士のはずなのに、ふたりはなぜか微妙な関係。それは彼らの行くところ、予想を裏切る恐怖と不条理が待ち受けているから…。繊細で緻密な独特のタッチと、ユニークなキャラクターが新鮮な著者の初コミックス。リアルな現実と、悪夢のような非現実が交錯し読者を奇妙な世界へといざなう、予想を裏切る面白さの異色青春ホラー連作シリーズ。

 本作をオールタイムベストホラー漫画としてあげる人も多い人気作。
 眼鏡の青年・りんたと付き合っている女の子さじ。恋人同士の2人はなぜか怪異に巻き込まれてしまい、奇妙な事件や怪奇現象が続きます。2人の恋と怪異が交互に描かれる本作は、気持ち悪さとコミカルさが同居する独自の読み応えがあります。
 巧みなストーリーテリングもさることながら、大ゴマを使ったコマ割りに圧倒されます。『謎の彼女X』や『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』の植芝理一や、猟奇要素の強い幻想怪奇漫画を描く漫画家・高橋葉介作品が好きな方にもおすすめです。

怖さも百通り 短編オムニバスホラー漫画

 短編でも背筋が凍るおもしろさ。おすすめのオムニバスホラーを2作品ご紹介します。

的野アンジ『僕が死ぬだけの百物語

僕が死ぬだけの百物語 (1)

僕が死ぬだけの百物語 (1)

謎が謎を喚ぶ、次代の正統派ホラー第1巻。少年が語る百の怪談。一晩に一つ。独り。動機は不明。謎が謎を喚ぶ。開幕。WEBにて話題沸騰中、背筋凍るホラー・オムニバス…待望の第1巻です。

 どこか懐かしく、そして新しい。少年が語る百の怪談を描いた、最新次世代オムニバスホラー作品です。都市伝説、人間への恐怖心、心霊スポットまで、さまざまなジャンルの恐怖が収録されています。淡々としたコマの連続から、突然なにかが飛び出すかのような衝撃が伝わる独自の漫画技法も特徴の一つ。漫画表現を巧みに用いた恐怖が綴られています。良質な最新ホラーオムニバスを求めている方におすすめです。

中山昌亮『不安の種』シリーズ

不安の種 フタの章 1

不安の種 フタの章 1

生ぬるい風、落下する不快感、背中に刺さる冷たい視線…。闇の種が発芽する時、非日常のモノ共が出現する!!

 日常に突然紛れ込む不条理的な恐ろしい出来事を、1エピソード10ページ未満で描くオムニバスホラー。『不安の種+』『不安の種*』も含め、10巻以上続く名シリーズです。
 作者は『PS-羅生門-』『ブラック・ジャック〜青き未来〜』の中山昌亮で、2013年には長江俊和監督が実写映画化しました。映画にも出てくる「オチョナンさん」が特に有名で、当該エピソードは『不安の種+』に収録しています。1話が短く大きな事件は起こりませんが、少しの「不安」を残していくような不気味な読後感が味わえます。

不安の種+ 1

不安の種+ 1

階下の暗闇に気配を感じるような、ドアごしの殺した息づかいのような、視界の隅に映りこんだ視線のような、ざらりとした質感、気分、戦慄。

終わりに

 おすすめの読み切りホラー漫画はいかがでしたか? 伝説のホラー漫画から少女漫画までジャンルも幅広くご紹介しました。読みやすい作品も多いので、ぜひさまざまな種類の恐怖を味わってみてください。
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