「泣ける漫画」と言っても、長編作品で読み切ることのハードルが高かったり、何を読んでいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。本記事では、「たまには思い切り涙を流したい……。」そんな気分の方にピッタリな、短編読み切り漫画や単巻完結の泣ける漫画をご紹介します。
漫画の歴史に残る名作から、話題の最新作まで幅広くおすすめ漫画を19作品厳選しました。ぜひ、お気に入りの一冊を見つけて頬を濡らしてみてください。
青春系のおすすめ泣ける読み切り漫画
学園生活を過ごす中で一瞬でも抱く気持ち。大人になると忘れてしまう感情だったり、青春真っただ中の方におすすめな、青春系の泣ける漫画4作品をご紹介します。
櫻の園(全1巻完結)
何度も映像化された名作! 恋のようで恋でもない、過ぎ去ってしまう青春の愛おしい時間が丁寧に静かに描かれ、爽やかな涙に誘われます。
毎年創立祭にチェーホフの戯曲「櫻の園」を上演する高校を舞台に、演劇部の少女達のそれぞれの悩みや痛み、心の葛藤を繊細なタッチで描いた連作短編集です。少女から大人の女性へと変化する過程で生じる問題や心模様を、『BANANA FISH』『海街diary』など、数々の名作を生み出した吉田秋生が巧みに描いています。
実写映画や舞台化された本作。特に1990年に公開された中原俊監督の映画が有名ですが、漫画原作ならではの独自の雰囲気が楽しめるので、映画を観た人にもおすすめ。映画版とは終盤のモノローグが大きく異なっているので、見比べてみるとおもしろいかもしれません。
とよ田みのる短編集 CATCH&THROW
爽やかに心洗われる感動短編作! 現在、漫画愛に満ちた新作『これ描いて死ね』を連載中の作家・とよ田みのるの短編集です。ささやかですがどこか力強い希望が描かれ、まぶしい優しさに包まれる読後感が味わえます。
表題作の『CATCH&THROW』は、父親が亡くなり、母親と共に東京から小島に移住した少年が主人公。コンビニも書店もゲーム屋もない島で、日本語が話せないハーフの少女と出会い、フリスビーを通じて友情を育みます。少年少女のみずみずしい友情と切ない別れが描かれ、ラストにフリスビーで心が通じ合うシーンは涙を誘います。
そのほか、後の連載作品『タケヲちゃん物怪録』の基になった『素敵な面倒さん』。少年少女の初々しいラブコメ『ラブロマ』の原型キャラクターたちが織りなす『片桐くん』などを収録。とよ田みのるのファンなら読んでニヤニヤしてしまうこと間違いなし! どの作品もおもしろく前向きな気持ちになれるので、ファンはもちろん、漫画を読んで元気になりたい人にもおすすめです。
竜の学校は山の上(全1巻完結)
奇想とほんのり切ない雰囲気の短編!
人気のファンタジーグルメ漫画『ダンジョン飯』の作者・九井諒子が手がけた短編集です。現実世界に少しだけファンタジーのエッセンスが融合され、不思議な世界観が魅力です。
収録作の『進学天使』は、羽が生えた女子中学生が留学しようか悩む物語です。留学先のアメリカは羽が生えた人に理解のある国ですが、主人公の男子中学生に対する淡い想いも後ろ髪をひいています。進路に対する思春期の葛藤が描かれ、ラストの切なさに胸が締め付けられます。わざとフォーカスをぼかしたような描線、余白を使った間の取り方など、巧みな漫画技術に驚かされます。
志乃ちゃんは自分の名前が言えない(全1巻完結)
繊細な感情に涙する。青春友情漫画!
『惡の華』や『血の轍』など次々と話題作を生み出す作家・押見修造による単巻完結漫画です。学生時代に話しづらさを感じ始めた押見修造自身の「吃音症」の経験をもとに描かれた本作。2018年に映画化もされ話題になりました。
言葉をうまく口に出せず、人と壁を作ってしまう主人公の少女・志乃。「名前くらい言えるようになろう?」と何気ない周りの言葉や善意が逆にプレッシャーになり、追い込まれていく日々。そんなとき、音痴がコンプレックスの加代と出会います。
コミュニケーションへの悩みを乗り越え、一歩踏み出そうとする青春漫画です。不器用だけれど、懸命に前に進む志乃の姿に胸が締め付けられます。誠実さが素直に溢れ出ている作者のあとがきにも涙します。
恋愛系のおすすめ泣ける読み切り漫画
キュンと胸を締め付け、切ない気持ちで泣ける恋愛漫画2作品をご紹介します。
田中雄一作品集 まちあわせ(全1巻完結)
非日常と日常の融合! 講談社が主催する『月刊アフタヌーン』の漫画新人賞「四季賞」入賞作家によるSF作品集です。壮大なスケールで描かれた異生物と人類との交わりが描かれています。
表題作の『まちあわせ』は、主人公の庄太郎が転校生の由香里と恋に落ちることからはじまります。しかし、由香里が病気で入院することになり、二人は離ればなれに。8年後、謎の巨大物体がある公園で再会した二人。最後に由香里の出生にまつわる秘密が明かされます……。
グロテスクな気持ち悪さと切なさが、独特な世界観のなかで描かれている快作。過酷な宿命を二人はどう乗り越えるのか、壮大な純愛SFラブストーリーです。ラストには大きな希望が感じられ、超大作を読んだような読後感に包まれます。
君の足跡はバラ色(全1巻完結)
恋と性とわたしがわたしであること!?
幼なじみの男女の体と心が入れ替わり、思春期を迎える物語です。小学生の頃に入れ替わった二人は、数年後思春期に直面し、それぞれ入れ替わった体を受け入れようとします。体に変化が起こる多感な時期に、心と体の性が一致しない二人はアイデンティティーを形成できるのか。元に戻れたとしても、自分の人生を生きることはできるのか……。
人気ジャンルでもある入れ替わり設定を、独特の空気感で包み込んでいる本作。斬新なラストに感動させられます。
切ないおすすめ泣ける読み切り漫画
切ない気持ちに浸りたい時におすすめの泣ける漫画6作品をご紹介します。
星守る犬
2011年6月11日全国東宝系にて映画公開!ハッピーは白くてちいさな子犬。小学生の、みくちゃんに拾われ、エサをくれるお母さん、ぶっきらぼうだけどいつも散歩に連れて行ってくれるお父さんと、幸せな日々を過ごしていた。しかし家族は少しずつ変わっていく…。お父さんが体調を崩し仕事を失ったことをきっかけに離婚、家族はバラバラ、自宅も処分することに。お父さんは、たった一匹そばに残ったハッピーと、故郷を目指し、ボロ車で旅に出る。少しばかり不器用で強がりなだけで、ごくありふれた普通の父親でありながら、どうしようもない立場に追いやられてしまったお父さん。そんな「お父さん」をひたむきに愛し、ついていくハッピー。ときに可笑しく、ときに切ない、限りある生を謳歌するような短くて永い旅がはじまった――。「ダ・ヴィンチ」BOOK OF THE YEAR 2009。「泣けた本ランキング」第1位。「読者が選ぶプラチナ本」第1位ダブル受賞作品!
号泣したい方におすすめ! 涙が溢れる感動漫画の名作。
「星守る犬」とは、決して手に入らない星をずっと眺めている犬のこと。主人公のお父さんは、職を失い離婚をしたことで愛犬のハッピーと車上生活をすることになります。
衝撃の1ページ目から、涙に溢れるラストまでとても切なく温かい物語です。本作を名作にしているのは、物悲しくやりきれない結末ではなく、そこから二転三転と大展開する点です。読み進めると次第に引き込まれ、気がつくと涙があふれます。原田マハによる小説版もおすすめです。
大丈夫。世界は、まだ美しい。(全1巻完結)
ある日、大切な人が突然いなくなったら……。この世を去った彼女への想いを、回想を交えながら切々とつづったエッセイ漫画です。『モーニング』にて突如掲載され、話題を呼びました。
エッセイ漫画という形式でありながら、感動もののフィクションではなく、淡々と素朴で素直な感情が詰まっています。ユーモアを交えながら語られていく彼女とのかつての日々と、その当の人物とは会うことができない現実。過去と現在が交差する構成と表現に圧倒されます。
大切な人を失うとはどういうことなのか、を改めて考えさせてくれる一冊。静かな涙に包まれる名作です。
運命の女の子(全1巻完結)
選ばれた残酷な運命に抗え! 現在『違国日記』を連載中のヤマシタトモコによる読み切り作品集です。どの作品も力強く、一筋縄ではいかない読後感が味わえます。
収録作の『不呪姫と檻の塔』は、生まれた時に呪いをかけられる世界で、一人呪われなかった少女の物語です。選ばれなかった者と選ばれた者の不安と恐怖が描かれています。現実離れした設定でありながら、現実を感じさせる巧みな演出によって共感すること間違いなし!
運命に縛られた女の子が解放される際の表情、またそれを形作るヤマシタトモコの繊細な描線の一本一本も魅力的です。
ヨルとネル
不思議な視点で世界を旅する二人。
小人サイズになった少年ヨルとネルが、実験施設から逃げ出してリアルな世界を旅する4コマ漫画です。私たちにとっての近所の散歩も、彼らにとっては大冒険のような危険にあふれた世界。新しい視点で、悲しくも微笑ましい冒険が描かれています。
『バーナード嬢曰く。』の施川ユウキによるロードムービーのようなシリアスな作品。小人から見える世界は私たち読者を楽しませてくれますが、やがて二人の前には壮絶で過酷な運命が襲いかかります。私たちは何のために生きているのでしょうか。そんな根源的な疑問に迫り、深く考えさせられる物語です。
虫と歌 市川春子作品集(全2巻完結)
圧倒的な漫画力で描かれた、淡く柔らかい不思議な世界!
人気作『宝石の国』の作者による、人と人ではない者たちの物語。突然現れた得体の知れない生き物と同居する『日下兄妹』を中心に、いずれの作品も不思議な何かとの出会いが描かれています。
イラストのような繊細で美麗なタッチで描かれ、独特の空気感や世界観を醸し出している本作。少し不気味でどこか寂しさや切なさを含み、読み手の心に残します。『宝石の国』に涙した方にぜひおすすめです。
ひかりのまち(全1巻完結)
SFからホラーまで。すべてがひとつの街で絡み合う群像劇!
『おやすみプンプン』の作者・浅野いにおによる連作短編集です。新興住宅地で起こるさまざまな事件を叙情感たっぷりに描き出します。自殺教唆に輪廻転生、宇宙人まで登場する騒動を巧みな切り取り方で読者を引き込みます。
前話の主人公や登場人物が背景に登場するなど、遊び心が凝らされています。異なる話の登場人物たちの視点と視点が交わっていることに気づいたとき、語られることのなかった物語の真意に涙が溢れ出ます。
優しさに泣けるおすすめ読み切り漫画
切ない気持ちに浸りたい時におすすめの泣ける漫画7作品をご紹介します。
と、ある日のすごくふしぎ
一瞬で読めるショートショート集! 『SFマガジン』に連載されていた宮崎夏次系の7年間分の短編を収録した作品集です。
シュールでエキセントリックな作風が持ち味の漫画家、宮崎夏次系。本作は、わずか8ページほどのショートショートを収録。短いページ数のなかに、万華鏡のように輝く切なさと繊細さが溢れています。
本作の帯に書かれた「世界からはみだしても、きみはひとりぼっちじゃない。」という言葉にビビッときた方は、読んで損はない一冊。宮崎夏次系の入門としてもおすすめです。
〜ガキの頃から〜 一色まこと短編集(全1巻完結)
全編号泣必至! 優しさに溢れた短編集。
『花田少年史』や『ピアノの森』の漫画家・一色まことの初期短編集です。家族のこと、友達のこと、子ども同士の小突きあい、エッチなこと。子ども時代特有の心情や純粋さが描かれ、最後には笑いと感動に包まれて優しい気持ちになります。
『花田少年史』に思わず泣いた大人たちにこそ読んでほしい大人向けの短編集です。垂れた鼻水に潤ませた瞳と歪んだ口元、「あれ?このキャラクターってもしかして……」と、一色まこと作品の登場人物の原型を発見するのもおすすめです。
あかり(全1巻完結)
超絶画力で描かれた光を見よ! 『塀の中の美容室』で受刑者の心の闇と社会復帰を丹念に描いた作者が次のテーマに選んだのは、「ステンドグラス作家」です。
妻を亡くし生きる意味を失ったステンドグラス作家の元に、生き別れた孫・あかりが訪ねてきます。二人はステンドグラス制作を通して心を通わせていきますが、実はあかりには秘密があって……!?
綿密な取材によって描かれるステンドグラスの制作過程に魅了されます。人の心はガラスのように繊細で、かつ光を反射させ誰かをまた照らしていく。「あかりをつけた時が一番きれいなんだ」、放たれるセリフのひとつひとつが胸に染み入ります。物語を彩るステンドグラスの描き方が、モノクロページであっても色を感じさせるような凄みのある描き込みばかりで圧倒されます。良い邦画を味わったような気分に浸ることができます。
水上悟志短編集「放浪世界」(全1巻完結)
圧巻のハードSF読み切り! 2022年にアニメ化された『惑星のさみだれ』などが有名な水上悟志の短編集です。
ラストに収録された100ページを超える『虚無をゆく』は特に圧巻! 物語の舞台は、宇宙空間をさまよう巨大居住区兼ロボットです。団地で平穏に暮らしていたはずの主人公・ユウは、突如ハードな現実を突きつけられ、世界の怒涛の真理に触れることに……。
ノスタルジックな箱庭のような世界から、絶望、希望、未来へと続くスケールの大きな話が描かれています。作品の熱量とノスタルジー感に心地よく包まれ、気づけば涙が流れるような作品です。
鬼頭莫宏短編集 残暑(全1巻完結)
哀愁漂う静かな名作!
『ぼくらの』や『なるたる』の鬼頭莫宏の初期短編集です。淡々としんみり、読後も心に残り続ける、まさに残暑のような作品が収められています。甘酸っぱさのなかにも生と死が、とげとげしさが描かれているのも魅力の一つ。鬼頭莫宏ファンの期待を裏切らない作風です。なかでも重い感動を与える『ポチの場所』は、少年たちが放課後通い詰める駄菓子屋を舞台。人生に不要なもの、消えゆくものや、寄り道をすることが人生につながると静かに訴える作品です。失ったものへの郷愁で温かい涙を流したい方におすすめです。
福島鉄平短編集 アマリリス(全1巻完結)
少年と少年による、愛でも恋でもない何か!
『放課後ひみつクラブ』を連載中の福島鉄平による短編集です。表題作の『アマリリス』では男娼として働かされる主人公のささやかな平穏な日々を、情感たっぷりに描いています。
台詞回しの巧みさと、繊細さが短いページのなかに詰め込まれています。結末には胸が痛くなりますが、エピローグは温かな気持ちになることでしょう。登場人物たちのこぼれる涙と満面の笑みが心に沁みます。
おーなり由子作品集 1 あこがれくじら(全3巻完結)
エモーショナルという言葉では表しきれないほどの良質なセンチメンタル、ここに極まれり。大人になるにつれ薄れゆく、淡く純粋な気持ちを思い出させる漫画をご紹介します。
多数の絵本を執筆する作家・おーなり由子の作品集です。大人と子どもの間の懐かしい日々に、胸がいっぱいになる作品が多く収められています。
『はくしょんの時計屋』では老人と少女のわずかな時間の触れ合いを、独自の発想でファンタジー仕立てに描いています。かつて触れていた世界を思い出させてくれるような、手触りの優しさを感じる詩的な言葉の数々にも要注目です。切なくも爽やかな読後感が味わえ、じんわりと温かい涙を誘う作品です。
終わりに
おすすめの単巻・読み切り泣ける漫画はいかがでしたか? じんわりと涙を誘う作品から、とことん泣きたい気分のお供に最適な号泣漫画まで、少女漫画・青年漫画を問わず幅広くご紹介しました。
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